第5教室:『ナナ』(エミール・ゾラ)『椅子直しの女』学習済み

エミール・ゾラの『ナナ』を読みながらフランス語学習をする日記です.よろしくお願いします.

椅子直しの女(13)(モーパッサン短編集より)

 
椅子直しの女(13)
LA REMPAILLEUSE


—————————【13】——————————————
    
 La  marquise  battit  des  mains.
  « Est- ce  beau  cela !   Et  quel  rêve  d' être  aimé  
ainsi !   Quel  bonheur  de  vivre  cinquante- cinq  ans  
tout  enveloppé  de  cette  affection  acharnée  et  péné-
trante !   Comme  il  a  dû  être  heureux  et  bénir  la
vie  celui  qu' on  adora  de  la  sorte !  » 
 


——————————(訳)——————————————

 侯爵夫人は拍手の手を打ちました.
 「まあ何てすてきなお話でしょう! そしてそんな
風にして愛されるなんて、何て夢のように素晴らしい
のでしょう.こんなに激しく心を動かす愛情に包まれ
て55年間を過ごせるなんて、何と幸福なことでしょ
う.さぞや幸福だったに違いありませんわ、そして
さぞや人生を祝福したことでしょう、この殿方は!

 

..—————————〘語句〙——————————————
      
Est-ce beau cela!:主語が人称代名詞 ce、on である場合
   には、感嘆詞を立てずに倒置法によって感嘆文が
   作れる.主語が ce、on 以外の代名詞か名詞であ
   る場合には、主語人称代名詞で繰返してから倒置
   する.Cet homme est-il aimable !(あの人、ほんと
   にやさしい人だ!)     
quel rêve d'être aimé ainsi!:これも感嘆文です.文構造は
   [quel + 名詞 de + 不定詞]
      [de + 不定詞] の部分は「~だなんて」
   [quel + 名詞] の部分は「何て~なのでしょう」
   d'être aimé ainsi:「そんなふうに愛されるなんて」
   quel rêve:「何て夢のようなんでしょう」 
   あるいは「何て素敵な夢なのでしょう」
   ポイントはde の部分の訳.「~だなんて」
   尚、このde で導かれる不定詞句がこの感嘆文
   の主語になります.
   quel は名詞を修飾しており、形容詞の一種です.
   文法用語としては「感嘆形容詞」と呼ばれています.
rêve:(m) 夢 
acharné(e):(形) 激しい、執拗な、断固たる     
pénétrant(e):(形) しみ通る、鋭い、強烈な     
bénir:(他) ❶祝福する、(人にために)神の加護を祈る; 
        ❷讃える、感謝する            
adora:(3単単純過去) < adorer (他)❶ 大好きである
    熱愛する; ❷礼拝する、崇拝する、崇める
de la sorte:そんなふうに
celui:il をcelui で反復して、説明しています.
        celui qu'on adora de la sorte !
    そんなふうに愛される彼は!

もう一度全部くっつけましょう.
Comme il a dû être heureux et bénir la vie  
「さぞや幸福だったに違いありません.」
「そしてまた人生をさぞや祝福したことでしょう.」
これに
celui qu'on adora de la sorte ! 
が続いています. 
「そんなふうに愛される彼は」

「そんなふうに愛される彼は、さぞや幸福だった
でしょうし、人生を祝福したことでしょう!」