椅子直しの女(13)
LA REMPAILLEUSE
—————————【13】——————————————
La marquise battit des mains.
« Est- ce beau cela ! Et quel rêve d' être aimé
ainsi ! Quel bonheur de vivre cinquante- cinq ans
tout enveloppé de cette affection acharnée et péné-
trante ! Comme il a dû être heureux et bénir la
vie celui qu' on adora de la sorte ! »
——————————(訳)——————————————
侯爵夫人は拍手の手を打ちました.
「まあ何てすてきなお話でしょう! そしてそんな
風にして愛されるなんて、何て夢のように素晴らしい
のでしょう.こんなに激しく心を動かす愛情に包まれ
て55年間を過ごせるなんて、何と幸福なことでしょ
う.さぞや幸福だったに違いありませんわ、そして
さぞや人生を祝福したことでしょう、この殿方は!
..—————————〘語句〙——————————————
Est-ce beau cela!:主語が人称代名詞 ce、on である場合
には、感嘆詞を立てずに倒置法によって感嘆文が
作れる.主語が ce、on 以外の代名詞か名詞であ
る場合には、主語人称代名詞で繰返してから倒置
する.Cet homme est-il aimable !(あの人、ほんと
にやさしい人だ!)
quel rêve d'être aimé ainsi!:これも感嘆文です.文構造は
[quel + 名詞 de + 不定詞]
[de + 不定詞] の部分は「~だなんて」
[quel + 名詞] の部分は「何て~なのでしょう」
d'être aimé ainsi:「そんなふうに愛されるなんて」
quel rêve:「何て夢のようなんでしょう」
あるいは「何て素敵な夢なのでしょう」
ポイントはde の部分の訳.「~だなんて」
尚、このde で導かれる不定詞句がこの感嘆文
の主語になります.
quel は名詞を修飾しており、形容詞の一種です.
文法用語としては「感嘆形容詞」と呼ばれています.
rêve:(m) 夢
acharné(e):(形) 激しい、執拗な、断固たる
pénétrant(e):(形) しみ通る、鋭い、強烈な
bénir:(他) ❶祝福する、(人にために)神の加護を祈る;
❷讃える、感謝する
adora:(3単単純過去) < adorer (他)❶ 大好きである
熱愛する; ❷礼拝する、崇拝する、崇める
de la sorte:そんなふうに
celui:il をcelui で反復して、説明しています.
celui qu'on adora de la sorte !
そんなふうに愛される彼は!
もう一度全部くっつけましょう.
Comme il a dû être heureux et bénir la vie
「さぞや幸福だったに違いありません.」
「そしてまた人生をさぞや祝福したことでしょう.」
これに
celui qu'on adora de la sorte !
が続いています.
「そんなふうに愛される彼は」
「そんなふうに愛される彼は、さぞや幸福だった
でしょうし、人生を祝福したことでしょう!」